高校の「情報Ⅰ」と共通テスト

共通テストに「情報Ⅰ」が加わる

 近年、学校現場で情報教育が進んでいます。
 2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化され、2021年度には中学校の技術・家庭科(技術分野)でもプログラミング教育などの充実が図られています。さらに、2022年度からは、高校で共通必履修科目として「情報Ⅰ」の授業が実施されています。
 この「情報Ⅰ」は、2025年度の大学入学共通テストから、新しく試験科目として加わります。今回は「情報Ⅰ」という科目で学ぶことや、共通テストにおける「情報Ⅰ」の出題内容についてご紹介します。

「情報Ⅰ」で学ぶ内容

 高校の「情報Ⅰ」では、どのような内容を学習するのでしょうか。
 恐らく多くの人が、「情報の授業」=「プログラミング教育」というイメージを持っているかもしれませんが、実はそれだけではありません。アルゴリズムやプログラミングの基礎は学びますが、社会問題の解決に情報や情報技術をどう活用するかといったことを学ぶ「情報社会の問題解決」、目的や状況に応じた適切な発信の仕方を考える「情報リテラシー」など、情報や情報技術をどう使いこなしていくのかを含めて幅広く身につけます。
 具体的にいうと、ネット上の誤った情報を鵜呑みにして、しかもそれを拡散させてしまうことや、匿名性に乗じて他人に攻撃的な書き込みをするなど、最近よく問題になっているような行動について学んだり、2進法など高校数学で習う内容を活用する問題を扱ったりします。

共通テスト試作問題

 共通テストに追加される「情報Ⅰ」の試験時間は60分、配点は100点です。大学入試センターはホームページ上で「情報Ⅰ」の試作問題を公表しています。試作問題は大問4つで構成されていますが、出題内容にはいくつか注目すべきポイントがあります。
 1つ目のポイントは情報リテラシーに関する問題が出題されていることです。試作問題の第1問では、インターネット上のサービスや情報の真偽に関する問題が出題されました。難易度は高くありませんが、インターネットを使う上での一般常識が問われています。通信データの意味や論理回路の演算処理、情報デザインなど情報に関する基礎的な知識も出題されています。
 2つ目のポイントは問題解決を意識した出題が見られることです。模擬店1日目のデータをもとに、2日目に状況を改善するためにどうするかといったことをテーマとして出題されました。手元にあるデータを活用して問題解決を図る思考力が問われます。まさに、情報ならではの問題といえるでしょう。
 3つ目のポイントはプログラミングの問題も出題されていることです。第三問ではプログラミングにおける変数処理やアルゴリズムの理解などが問われています。関数の使い方についても出題されていますので、プログラミングに関する基礎知識全般を問う問題だといえます。
 4つ目のポイントはスマートフォンをはじめとする情報通信機器と人の関わりについての出題です。スマートフォンやパソコンの使用時間と学業の時間の関係を示すデータから正しい仮説を選ばせる問題などが出題されています。データから正確に情報を読み取る能力が求められる問題です。

各大学の実施状況

 国公立大学では、「情報Ⅰ」を入試の必須科目としている大学は全体の96%です(3%は選択科目扱い)。配点については各大学で対応が大きく分かれています。北海道大学は得点化せず、成績同点者の順位決定にのみ活用することを発表しています。東北大学や名古屋大学は低めの配点、京都大・神戸大・九州大は学部ごとで配点比率がことなります。私立大学では、法政大学のように選択方式によるところや、東京農業大学のように「情報Ⅰ」を課さない大学も多くあります。もちろん必須科目として取り入れる大学もありますが、専修大学や日本大学などの主に情報系の学部にとどまっています。いずれにせよ、最終的な情報は各大学の入試要項が出てくるまで待つしかなさそうです。